2012年6月14日木曜日

広州・桂林・陽朔旅行で思う事(善隣友好が大切です)

興坪
1.背景にある国際情勢

<欧米日の衰退を隠す、やらせ景気回復>

日米欧主導の時代が曲がり角に来ている。副島隆彦氏の「欧米日やらせの景気回復」によれば、ユーロ圏は米日とも協調してジャブジャブ・マネーを作りだし、その結果フランス大手3行等欧州の30行が倒産を免れ、一時的に円安、株高の局面になっていると論じ、投入金額が巨額なので暫くはその効果が続くとしている。ドイツまで米国金融工学に騙されていたのでユーロは大きな危機だが、これで乗り切る事が決まったようだ。まだ危機の演出は続くが、この大きな流れは変わらないだろうが円高・株安が再燃したり、日銀の介入で円安・株高になったり方向性が定まらない不安定な局面が続いており、注視が必要である。

<中国等のBRICSの台頭>

米国1国覇権の時代から、中国との2極時代が始まっているのは確かだ。中国等BRICSの台頭は目覚ましいものがある。しかし日本経済新聞やNHKを始めマスコミは、米国や官僚の統制により、米国金融の内情の酷さや、米国の貧困大国化や、米国民の統制強化・自由の喪失等には触れず 「日米同盟の深化の重要性」のみを強調するだけだ。IMF等を通じた日米欧の官僚統制経済の強行により衰退を隠し、各国民の負担を増大させて米国債・株価・景気を維持する事に必死である。
一方の極に成長したBRICSの動向について日本の報道はあまりに少なく、しかもマイナスのもののみ選んで誇大に報道していて、マイナスのイメージを植え付ける意図が強過ぎるようだ。正しい、実態を掘り下げた情報が本当に必要な時なのだが。

<分断工作・米国の戦略とマスコミ>

米国と隷従する日本の官僚・政府は中国との尖閣諸島領有を巡る争いを煽ったり、韓国人の多い特別永住者の地方参政権の問題や韓流過多を批判したり、北のミサイル問題を過大に騒ぎ立てる等、日本と近隣国と争わせるようにあからさまな工作を展開している。マスコミは積極的に動いており、まともなジャーナリズムではなく、分断工作の首謀者の一員であるように見える。

<米国の戦略の変更>

・中東への関与減
米国はアフガニスタンで2014年末に治安の権限を委譲する。2012年7月から米軍の一部撤退が始まるが、パキスタンとの関係悪化で退路の確保も難しそうだ。今後中東への関与度の後退を余儀なくされている。シリア情勢の日米欧の報道も一面的過ぎ、イラクに大量破壊兵器が無かったように、民衆虐殺を誰がやっているのかは疑わしく、真相を見極める必要がある。
イランの核施設への攻撃が決行されるのか?が最大の問題なのだが今はサイバー攻撃を仕掛け核施設空爆以上の戦果をあげようとしているようだ。

・中国包囲網作り
いずれにせよ米国は中国を仮想敵国に見立て包囲網を構築しようと新たな防衛線作りに必死のようだ。野田政権に森本氏を防衛相にするよう指示し、対中国敵視政策を遂行させようとしている。
しかし事は単純でなく、米国債の保持を続けて貰わないと経済が成り立たないので、中国とは裏の繋がりは太いようだ。
米軍の再配置に呼応したと思われる東京都・石原知事の尖閣諸島購入の動きを丹羽駐中国大使は批判したが、政府から撤回させられ、近々交代のようだ。本当は視野が一面的で挑発的過ぎる東京都が購入する方が問題なのだが。野田首相自身も対米盲従しか考えていないので、このままだと日中関係も難しい局面になってしまう恐れが強い。


<近隣国とは善隣友好関係が一番>

・軍拡や戦争を煽る人達
一般市民にとっては、隣国との密接な友好関係に基ずいた交易や人材の交流による安定した互恵関係が共通の利益なのだ。米国の産軍複合体やそれに連なる人達にとっては、緊張を高めて高額な武器を売却する事が多大な利益に繋がるので危機の演出に必死だ。
更に一番の問題は、米国大銀行達の大赤字の裏帳簿を御破算にする為に戦争を起こそうと企んでいる人達がいる事で、いろいろな策謀を繰り広げており、徐々に緊張が高まりつつある。

・ネットの情報把握と共有で友好促進に繋げよう
幸いにも、今は一般市民でも米国やイスラエル政府の意向・動向がネット上である程度把握出来る時代だ。彼らの意図・行動を監視して暴発させぬよう注意が必要だ。一方隣国中国の実像を把握する為に出来るだけ自分の眼で各地を見て回り、正しい情報により無益な戦争や軍拡競争に陥る事なく、安心して交易・交流出来る関係作りが重要である。


<中国の実像に迫り良好な関係作りをしていこう>

今回の旅行で自分で見聞きした最近の中国の実像を纏めてみた。大国中国の僅かな一部分とは思うが、悪意を持って対立を煽る日本の情報空間を通じた中国の姿と実態とは乖離が大きいのが実情と思う。
私達は素直に中国の急速な実力の向上を認めた上で、発展に伴う様々な問題点も把握しながら、対等・親密な両国関係を築いていく事が重要だ。その基盤を築いた上で楽しい民間交流をしていきたいものです。

2.それぞれが美しい街。急速な成長はまだ続いている。

(1)広州・桂林・陽朔旅行で感じた事

<広州=落ち付いた大都会>

・関空から4時間15分の広州は広東省の省都。人口1270万人の中国第三の都市だ。上海や北京より渋い、落ち付きを感じさせる街並みである。
・「食は広州にあり」は本当だった。広東料理だけでなく、四川・北京等多彩な料理が味わえる。
・香港・深圳のほぼ西。深圳も近く、電車で2時間程で香港にも行けるし、マカオも遠くない。
・市内の中心街は銀座の道を少し細くした感じで美しく、通行人は皆かなりお洒落だ。中心街にさりげなく宋・明の時代の発掘された古道があり、気楽に安心して散歩が楽しめる。
・ショッピングモールは香港資本(李兆基の恒基兆業地産集団?)による最新の作りで華麗で広大だった。本当に沢山のブランド店が軒を連ねていて、中国の富豪達用の高額な翡翠・金製品が並べられ圧倒される。眼の保養にはなったが。
・市内の西越博物館には古代の墓・煌びやかな埋葬品があり、一見の価値がある。
<桂林=景観の素晴らしい国際的観光都市>

・広州から飛行機1時間余りで桂林へ。ここも大きく立派な空港だ。
・ホテル(漓江大瀑布飯店)からは漓江の景観が眺望出来る。翌日象鼻山や七星公園を散策した。公園は広大な森で入場料が高いらしく人が少ないので、3頭いるパンダも間近でガラス越しにゆったり見れた。
・近くの両江四湖クルーズでは4つの少数民族の住居を巡り歓迎を受けた。川に点在する少数民族は観光客に文化を見せて暮らしているようだ。
・お目当ての漓江下り(距離83km)は山水画に良く出る景勝地の風景が竹江から陽朔までずっと続く。今回は雨で水量が多く4時間で下ったが、両岸の景観が変化し続け全く見飽きなかった。
・桂林の人口は500万人弱だそうだが観光客が多く、国外から年間500万人も訪れるとの事。国内からも3000万人と言う。空港も立派で欧州からの観光客も沢山いて賑わっていた。


<陽朔=懐かしい風情の桃源郷>

・桂林から陽朔はバスで2時間程。陽朔は人口30万人の小さな県。中心にある西街は西洋人が多い街の意で、国際色豊かでホテルからも近く、民族品のショッピングが楽しかった。
・景勝地陽朔に3泊したが、ホテルは5つ星で木材を多用した瀟洒で大きなリゾートホテルだ。部屋のベランダから山水画そのものの風景が見え、沢山の鳥の鳴き声が聴こえ、眼前を流れる小川に筏舟が行き来し、牛追いの農民もいて、蛙も鳴き、本当に昔懐かしい桃源郷のような所だった。
・すぐ傍から6人乗りの筏に乗って小川を下る。鵜飼も間近で見れた。長良川より大きな魚を何度も飲み込み吐き出していた。暫く川岸を歩くとラクダまでゆったり歩いていた。
・扇子で有名な村の福利鎮見学後、漓江を見るスポット(20元札の図柄にもなっている)の興坪では、日本人の林さんが作った「和平亭」から漓江を眺めたがなかなか乙であった。
・農村は昔と様変わりしてすっかり豊かになったようで、農家の3~4階建ての大きな家並みが点在して続き、用水路も整備が進んでいて、農産物も種類が豊富でおいしいのには驚いた。
・夜は水上歌劇「印象 劉三姐」を観た漓江の川と山全体を舞台にして600人が舟や川岸で演じる。北京五輪でも活躍した演出者の光や音声効果が素晴らしく、オーストリアで観た野外オペラにも優るとも劣らないものと言えよう。但し、雨だと川の水量が増え中止になる事が多く、3日泊った最後の日にようやく観る事が出来たのは運が良かった。

3.中国関連の最近の動き

<変化の兆し>

6月から円と元がドルを介さず直接交換出来るようになった。まだ3大銀行位しか活用していないようだが、徐々に貿易業者にも拡がっていくのだろうか。観光客に限れば土産物購入で円は歓迎されるので、もう先行しているのだが。


6月7日、上海協力機構(SCO)加盟国首脳理事会第12回会議(北京サミット)が北京で開催されている。発足して日が浅い国際機構だがこれまでの10年間を順調に歩み、安全保障、経済、人的往来及び文化などの各分野で大きな力を持つようになって来ている。今回はアフガニスタンまでもがオブザーブしたようだ。ロシアのプーチンはG7に参加せずSCO参加を優先した程である。
米国一極覇権の時代は確実に最終局面に入っていると言えるのだが日本のマスコミ報道では全く分からないだろう。

<いくつかの大きな課題>

日中間には先の日華事変・大戦という不幸な時代があり、靖国神社参拝問題や南京事件についての歴史認識問題等を抱えている。中国共産党独裁でチベット問題もあり、伸びていてもまだ新興国で商品の品質は良くないとのイメージも残存している。

何よりも中国軍の力が増大しており、核搭載の潜水艦やミサイルが米軍にとっても大きな脅威になって来ているようだ。米軍が沖縄集中配備から、グアムやフィリピン、タイ、ベトナム、豪州等に分散配置を図っているのもこの脅威を避ける為なのか。米軍はもう辺野古移転は考慮外になった筈だが日本政府は必死に繋ぎとめようとしている。県民の意識はますます県外移設で固まっているので不可能だろうが。

尖閣は折角実効支配しているのだから、棚上げして資源の有効活用策を持ち交渉していけば良いのだが。中国漁船衝突事件も尖閣3島東京都買い上げ問題も、日本から(米国の指示で?)わざわざ喧嘩を売っているように見える。国の対応が不充分ではあり問題提起の意義は認めるが、強がるだけの愚かな行為と思う。

日本が米国の軍事力をあてにして「日米同盟の深化」とかいう美名の下、自衛隊が事実上米軍の指揮下に入るかのような動きが進んでいる。国会でまともな論議が無くなって事実がどんどん先行しているようだ。集団的自衛権の行使も認めないと言葉では言うが、なし崩しに拡大解釈して米軍との共同軍事演習を海外各地で始めそうなのは問題である。

いつの間にか中国を仮想敵国であるかのような動きが始まっている。一方で中国との貿易は米国とのそれを金額で上回り、不可欠である事が過小評価され過ぎていると思う。

4.友好・交流の輪を拡げよう

それにも増して日中間の長い歴史・文化の交流を軽視し過ぎていないか。英語が国際的に重要な言語である事は論を待たないが、米国の支配層の考えである「合理的精神」を突きつめていくと、金が全て、力が全て、自由競争で勝者と敗者がいるのは当たり前という殺伐とした世界になっていく。中国も幾多の戦乱を経ていてとても一筋縄ではいかないので充分な警戒は必要だが、胡錦濤主席の儒教を土台にした「和階社会」の理念は成功しているし、一定の信頼は出来る国だと思う。

とにかく米国一辺倒で隷従して中国を敵視する政策は取るべきでない。交流の輪を少しでも拡げていく事が望まれる。成都も青島も厦門も大連も素晴らしい街並みになっている。どこも数時間で行ける本当に寛げる所なのだ。
又豊かになった中国人に沢山来て貰い、日本の良さを体感して欲しい。今回関空に帰る便は満席で多くの中国人が乗っていた。(白いランニングシャツ姿の農民が国際便に乗る時代だ!)

私は初めて中国へ行った時、平安初期に苦労して海を渡った空海が訪れたという西安の青龍寺へ行って見た。そこで求めた槐樹の数珠を今も大切にしている。今住みだした所も高野山へ1時間半で行けるので縁を感じている。仏教は昨今は葬式仏教と揶揄されるが、簡単に捨て去る程値打ちの無いものではないと思う。
お茶も漢字もいろいろ中国伝来のものは多い。この歴史的・文化的な太い絆はもっと大切にしていくべきではないだろうか。

以上