2012年4月12日木曜日

「次なる経済大国」 ジム・オニール氏著    北川知子氏訳を読み乍ら感ずる事

八丈島からの切り花
<始めに>
世界最大級の投資銀行のゴールドマンサックス(以下GS)、リーマンショックの嵐にも生き残った。そのグループ会社GSアセット・マネジメント会長のジム・オニール氏の2012年2月の著書。「BRICs」の造語を生みだし、2001年にチームで分析レポートを発表した事で有名な人物の新著は注目に値する。
世界で起きる重大な出来事に関与している度合が高く、むしろいつも引き金を弾いていると言ってもいいGS。ギリシャ危機も発端はGSだ。その真実を知る一人なので、一般人として抱く嫌悪の感情は別にして、真相の核の部分は触れられていないにしても大きな流れについての見方を知っておく事は実に重要だ。大きく言えば大阪の橋下市長の背後にも関与の翳があるのは当然だろう。
<テーマの概要>
「次なる経済大国」の帯に書かれている事が重要だ。→「日米欧の時代は終わった」
日本が低迷する20年間、世界経済の勢力図は一変しつつある。いまや世界は成長の時代。驚愕すべき新たな現実が幕を開けようとしている。…我々がこれらの台頭しつつある国々を全く異質な新興国市場と考えるのを止めるならリスクと機会のバランスを良く理解出来るに違いない。
私はBRICs諸国とインドネシア、韓国、メキシコ、トルコの8カ国を「成長国市場」と呼ぶ。これはマーケティングの戦略でもなければ、新しい投資ファンドを売る手段でもない。
誰もが、世界的視野に立って考える為の方法なのだ。


(私の意見)
上記の見解は本当に共感を覚える。特に日本人の比較的多くの人達には受け入れたくない現実だからだ。それが日本企業のライバルに成長した中国・韓国への極度の反感になったり、今後両国の成長が止まる事を喜んだり望んだりする狭い料簡に通じていて、つまらない感情的な予測本も多いのが現状だ。
それを米国産軍複合体とその手先達にいいように利用され、マスコミ等に何も知らない癖に好戦的言辞を吐いている連中が多いのも困ったものだ。米国の国益の為に、前原のように嗾けられて喧嘩する(フリだけでも)愚は絶対に避けなければならない。こういう場合のマスコミの報道は煽るだけ煽る酷いものだ。(中国が強大になって今の経済優先で無くなり侵略的姿勢が顕著になった場合はどんなに不利でも断固戦う姿勢は必要だが)
日米同盟を盲信し米軍が日本防衛の為に戦う事をアテにしている人達が多いのには驚く。こんなにも多くの米軍基地が無ければ国を守れないのだろうか?米国の軍事基地のままいつまで占領され無理な事(郵政完全民営化も消費税増税もTPP加入も)を指示されていいなりになっていたら気が済むのか?
今や大金持ちになった中国資本が日本に投資する事を嫌悪する人達は、米国欧州資本の投資との違いは何だと言うのだろうか?貿易がどれだけお互いの為になっているか何故もっと取り上げないのか?
隣国中国との長い交流の歴史は隅に追いやり日中戦争の歴史のみ強調する。一方大東亜戦争で米軍のなした事は全て忘却さすよう必死で隠し、教育で米国・国際金融資本に従順な人間を量産しようという長い計画があるように思われる。これはあまりにも対照的過ぎないか。


衰退する欧米の仲間に入れて貰って、いつまでもG7だG8だと先進国気取りで特別会計から金を巻き上げられて喜んでいる場合では無いのだ。官僚はIMFや世界銀行やIAEAのポストを与えられ大喜びだ。しかし米国一国覇権の時代はもう終わりが近いのだ。
既に中国・インド・韓国・インドネシア等の「成長国市場」が世界の景気動向を左右している事は、財務省や日本経済新聞等米国の支配下にあり発言の自由の乏しい人達以外の経済に関心のある人には誰でもわかる事だ。ベトナム・マレーシア・シンガポール等も含めこれからはアジア市場で活路を開いていく必要がある。


この当たり前な事の周知を妨害し、中国・アジア市場で日本企業の活躍を阻み、米国企業だけが進出しようとしていたのが田中角栄を潰したキッシンジャーであり、小沢一郎を潰そうとしている米国の国策である。昔の政治家・官僚は日本の国益を大切にしたが、徐々に良識派官僚は排除されていき、愛国派政治家に政治をさせず、米国の意のままになる官僚・マスコミのみが生き残り堕落政治家(国民無視・嘘が平気で自分の利益・地位保全しか考えない連中)を操り官僚独裁をする異形の属国が今の日本の姿だ。

韓国は既に徹底的にコストカットされ現代グループは滅びサムソンの株も6割程は外国資本に握られ、いよいよ日本も韓国同様に完全支配しようとしているのがTPPである。(韓国の野党の必死の抵抗も今の所かき消されているがいつまでもいいなりでは済まないだろうと思うが激烈な競争社会で良く頑張っているが気の毒な位だ)

<序章 想像を絶する成長>
リーマンが破綻した3週間後、オニールは結婚25周年記念旅行で2週間のエベレスト山麓トレッキング旅行に行った。その結論は自分達が考えていた「グローバル」危機も、少しもグローバルで無く、西側諸国だけの問題だと気付いた。

BRICsを名付けて10年後の今日これらの国がいくつかの新星と共に現在から未来に向けての世界経済の成長エンジンである事をさらに強く主張しておきたい。
世界金融危機が起きると多くの人々がBRICsの成長物語は終わりだと考えた。直後BRICs株式市場も先進国以上に暴落した。しかしBRICsは世界経済基盤の激震を乗り越え、これまで以上に逞しい姿を見せた。2001年4カ国合計GDPは約3兆ドル。今は約4倍の11~12兆ドルだ。(世界全体は2倍)これは日本とドイツが新たにもう一つずつ生まれたに等しい。

2005年バングラディシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムを「ネクスト11(N-11)」と名付けた。このコンセプトも幅広く受け入れられたが、特に韓国、インドナシア、メキシコ、トルコの4カ国はBRICsと共に「成長国市場」だ。


BRICsの台頭とその後の成功は多くの人々を驚かせている。膨大な数の国民の生活を変え始め、貧困から脱出させ、大きな野心を抱かせ後続する国々の明るい展望は、現代社会を彩る壮大な物語である。

(私の意見)
近年旅行で、中国(上海・深圳・北京・大連・厦門・成都・青島)・インド・トルコに行って感じた明るさ・発展の息吹きはまさにここに書かれている通り。イギリス・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・イタリア・チュニジア・スペイン・フランスの停滞も同様だ(ドイツは頑張っていると思う)。
日本の書店に並ぶアンチ中国のバブル・体制崩壊願望論の視野の狭さに呆れる他はない。昔見た韓国・メキシコの近年の発展振りも見たいし、まだ見ぬロシア・ブラジルの興隆振りも是非この眼で見、肌で感じたいものだ。

しかし、ここまではあくまでもGSという成長の果実の多くを奪い味わう立場の人の言う世界であり、現実では裏面で地下で苦しむ人達の翳も併せ見て行く必要はあるのだが。

<最後に>
この本の本番はこれから始まり1章~9章、終章とあり各章の表題に止めるが、是非ご一読をお勧めする。
第1章 BRICsの誕生 
第2章「新興」から「発展」へ 
第3章 BRICsーブラジル・ロシア・インド・中国
第4章 勃興する成長市場 
第5章 成長に伴う資源は充分か 
第6章 次なる消費大国
第7章 歴史を超える新たな同盟 
第8章 世界経済の新たな秩序 
第9章 塗り替わる世界経済地図。
終章  世界はよりよい時代に 

ただ1つ付言したい事は、米国の金融資本の中核にいるGSAMのオニールの世界観はとっくにG2(米国と中国)時代である事、米国→中国へと徐々に覇権ウェイトが移行する(いずれ10年位でGDPが逆転する)事を前提にしており、かつ楽観的な事だ。
この事は米国の支配下でその手先と化した日本の官僚・マスコミ・堕落政治家の眼を通した世界観と、中国の将来についての見方はかなり異なったものである事だ。
日本は原発被曝問題やTPP・消費税問題を抱える今こそ、時間のゆとりと小金のある団塊以上の人達(どうも欧米崇拝から抜けきれぬが)や、金が無くても語学が充分で無くても若さという最高の財産を持った人達はどんどん世界に飛び出し、この動きに触れ、息吹を直接感じ、活躍の場を切り拡げて欲しいものだ。

とにかく腐りきった視野の狭い官僚・マスコミ・堕落政治家(菅・仙谷・野田等の変節は政治屋以下)の支配下に入りつまらない人生を送るので無く、広い世界へ飛翔を図るなり、太い繋がりを持つ事が普通の国民にとってこれほど重要な時期は無いだろうとつくづく思う。             以上