2011年3月26日土曜日

福島原発事故の危険度について

先ずは今般の東北地方太平洋沖地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。

今回の原発事故に関していろいろな情報がありますが、私なりに調べた内容を纏めてみました。


東京電力福島第一原発の事故は、放出された放射線の推定量からみて、国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。すでに米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。放出は今も続き周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがあるというのが基本認識で必要。
今回の東北関東大震災の3つの要素(地震・津波・原発事故)のうち、今後も放射線被害の拡大の懸念の強い原発事故にだけ焦点を当てて、今後の危険度について考えて見たい。誰のどういう情報を注視したら良いのか?大掴みに、当面は「悲観的過ぎずに、それでも最悪の事態を常に想定するという立場」でまとめて見た。 

しかし原発開発の経緯を知るにつけ今回の大事故は起こるべくして起こった事故である事がわかってくる。日本中既に大変危険な状態になってしまっていて、今後余程原発事故の危険を低減させる努力をしないと、将来今回を遥かに超える「原発の齎す放射能被害事故」が起きてしまう。その事を免れるのは奇跡的に近い程の段階に来てしまっているのではないか、と思わざるを得ない。

今年から新大綱の策定作業がはじまっているが、いまのところ17年の大綱が生きており、すくなくともこれが現下における日本の原子力行政の基本的な考え方といえる。これによると「2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す。さらに、2030 年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく」(エネルギー基本計画)となっているのだ。

今回は将来の危険性の除去即ち原発推進路線の見直しの必要性の議論は入らず、当面浜岡原発等差し当たり危険性が特に高い原発の即時運転中止を求めるだけに止め、「東京の放射能汚染への対処策」に的を絞り情報を整理して見た。

1.福島原発事故・一体何が起こったのか?


 (1)原子力平和利用の歴史

1954年3月米国のビキニ環礁水爆実験で被爆したマグロ漁船第五福竜丸の件で日本の原水爆の反対運動が盛り上がらぬよう日テレの柴田秀利常務(当時)が工作を展開。第三次鳩山一郎内閣の正力松太郎北海道開発庁長官・原子力委員長が原子力平和利用」を推進。原子力に対する日本人のアレルギーをエネルギー革命を待望する世論へと変えるよう原子炉の導入策を推進して来た。


福島第一・1号は1966年の茨城・東海1号(すでに廃炉)1970年の福井・敦賀1号、美浜1号に次いで1971年3月に運転開始した日本で4番目に古い原発である。


(2)福島第一原発・プール設置状況と事故の現状


原子炉はその後順次導入され福島第一が6機、福島第二が4機、合計で10機と膨れ上がってしまった。福井県の13機に次ぐ原発県となっている。(製造会社は福島第一の原子炉はGE製の導入で始まり、その後国産の東芝・日立もGEの技術を踏まえているらしいので5号機基本は殆ど同じ)。
だがそれ以外にも大きな問題がある。使用済み核燃料の処理が大変で、高速増殖炉もうまくいかず、再処理場設置もままならず、やむを得ず各原発敷地に隣接して作った冷却が必要な「核燃料の巨大プールが存在する」事も大問題なのである。


事故の現状は各機毎に微妙に違う為、各々個別に問題点を把握する必要がある。いずれにしても1機の格納容器が破壊した場合は放射能濃度が酷くなり、第一原発の他の5機・核燃料プールの管理も不能になり大惨事になる危険性を孕んでいる。その場合は少し離れた福島第二の4機・核燃料プールも危なくなる。

①1号機 GE製(マークⅠ)。
40年経過している老朽施設で、元々米国で事故が多いと安全性が懸念されていた機種。

今回水素爆発?があり建屋上部が飛んでしまった。地震で格納容器の下の方の内部配管に損傷があって上部に水素が溜まって引火したからなのか?
今配電を再開すべく電源を繋げる工事が出来た段階。まだ冷却水をポンプで安定的に供給出来る状態ではないので炉心溶融が進む恐れがある。
24日又白煙が上がったが炉心(燃料棒)溶融が進んでしまったからなのか。ただ、
「1号機の原子炉に海水を注入中で、24日午後に約218度まで温度は下がったが、逆に格納容器の圧力は高くなった。注水した海水が蒸気になって圧力容器内の圧力が上昇し、外側の格納容器に蒸気が出たとみられる」と東電・政府筋は発表。
原子力安全委員会の班目春樹委員長は23日夜「1号機の核燃料はかなり溶融している可能性がある。2、3号機に比べて、最も危険な状態が続いている」と指摘している。


②2号機 GE製。
1974年7月運転開始。1994年6月シュラウドにほぼ全面に亘るひび割れが発見され応急的処置がとられた事がある。初期の原発のステンレスは腐食しやすかったようだ。

今回格納容器の一部損傷か圧力容器の損傷か不明だが、格納容器下部で爆発があったようだ。非常用炉心スプレー系がどうなっているのか?とっくに壊れていてもおかしくないが何とか持っている。圧力が高くなった為このまま放っておくと爆発するのでベントを開け外部に放射線物質を放出させている状態が続いていて安定からはほど遠い。

③3号機 東芝製。 
1978年4月運転開始。1997年3月に危険なシュラウド交換工事を発表し年末から工事強行した経緯がある。

14日に1号機と同じ大爆発があり建屋は半分以上吹っ飛んだ。1.2号機と違う3号機の大問題は原料である。プルサーマル計画の一環でMOX原料(ウランと最も猛毒のプルトニウムを混合したもの)を使用しているのだ。そして発表は水素爆発だが本当はそんな生易しいモノでないと思われる。黒煙まで出した爆発である。原子炉内で生成された全ての放射性物質を放出したのではないか。(つまりNHKはセシウムとヨウ素だけしか発表しないが当然プルトニウムや他の放射性物質も放出されている筈であると思う。因みに原子力保安院に電話照会したところ、検査結果数値は東電データに基づいてプルトニウム漏れは無いと発表しているだけとのことであった。)

ヘリや消防車による放水作業はこの3号機に対するのが主体になっていた。格納容器内の水量はどうなっているのか?冷却能力はもう壊れていないのか?

21日朝格納容器の圧力上昇があった。3時55分爆発し使用済み燃料器付近から黒煙が上がる。その後23日も黒煙が上がった。仮に冷却が順調に行っても安定するまでおおよそ2年程度はかかるらしい。そして24日遂に作業員3名が被爆、皮膚を損傷する事故が発生してしまった。放射能濃度は1万倍と言う。政府の発表はまだ不明確だが格納容器か連結する配管の破損を認め始めた。そうなると管理は非常に困難で長期間の放射線・放射能の排出が続く事を覚悟する必要がある。

④4号機 日立製。
1978年10月運転開始。1988年3月日立の元設計主任の内部告発により圧力容器の欠陥加工履歴が判明していた。

今回事故時は運転を休止していたのだが地震や津波のせいか燃料の温度上昇があったので推移を監視する必要がある。米国専門家は格納容器の斜め上にある核燃料プール(MOX燃料)の水は既に無くなっていて大変危険だと懸念している。

⑤5号機 東芝製。1978年4月運転開始。事故時運転休止中。
3月21日(月)電源回復、冷却可能になる筈だが。温度上昇しないか監視要。

⑥6号機 東芝製。1979年10月運転開始。事故時運転休止中。5号機とほぼ同じ状況か。

⑦使用済み核燃料プール建設。ここにも大量のMOX燃料があるが、現状は一切報道されていない。

1978年原子力委員会が原子炉の耐震性設置基準を初めて定める。この時点までに既に25基が建設着工済みであったのだ!1981年原子力安全委員会が耐震設計審査指針を決定。ここでは津波を軽視していて数メートルの高さしか想定していなかったのだ。

福島第二原発の4機にもそれぞれ問題はあるがここでは省略する。

(3)過去にもあった福島原発事故

1989年1月福島第二原発3号機の再循環ポンプに大規模破壊事故があった。直径1メートルの鋼鉄製の円盤が二つに割れていた。大口径破断による冷却水喪失事故で、メルトダウンに繋がりかねないものであった(4年前から最初の異常はあったのだが軽微として放置していたのだ)。

(4)使用済み核燃料の廃棄場所不在の為、各原発で保管している現状の恐ろしさ

①1998年10月福島原発から初の使用済み核燃料テスト搬出。六ヶ所村へ。各地の使用済み核燃料搬出容器に中性子遮蔽材のデータ捏造・改竄発覚。

②1999年6月国会で原子炉等規制の改正案通過。2000年6月施行。47都道府県で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が可能になった。最終処分場が無い為にやむを得ず各地の原発に置いているのである。

③2001年福島第2と美浜原発の使用済み核燃料プールが満杯に。

④2010年福島第一原発の使用済み核燃料プールが満杯になり全原発が運転不能状態に陥った。
(詳細要確認)


2.福島原発事故の今後の展開はどうなるのか?


24日現在、これで終息していくかのような話が出だしていたが流石に東京・金町の水源の放射能汚染は乳幼児を持つ母親達を不安に陥れた。飲料水の極く僅かな配給で収まる筈がない。ようやく東京の一般市民も「本当に大丈夫か?」という疑問を抱き始めている。

風車発電や太陽光発電等持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする政府や産業界から独立した第三者機関の環境エネルギー政策研究所飯田哲也所長の3月20日時点の「考えられる最悪のシナリオ」の要旨は以下の通り。

①再臨界と水蒸気爆発の可能性は否定できないが、核爆発やチェルノブイリ事故のような破滅的事象は恐らく起こらない。

②首都圏や仙台等の大都市は、避難勧告のような事態は避けられるのではないか。

③それでも最悪シナリオで放出される放射能はこれまで一時的に放出された放射能よりも桁違いに多くなる可能性がある為、現状の避難範囲(避難20km屋内退避30km)の再検討やヨウ素剤の配布計画、広範な地域での被曝を最小限に抑えるためのマニュアルの作成、周知徹底が必要である、としている。

概ね同意だが他の信頼出来る専門家の意見と常にひきくらべて確認・修正していく必要がある。
(長年原発の危険性を訴え続けて来た広瀬隆氏の見方はもう少し厳しいようである)。

3.放射能被害の危険をどう見たら良いのか?


既に放射能被害の大体の傾向は判明しつつあり、普通の国民は諦めて許容して生きていこうと腹を括っている人達が多い。どう対応していくにせよ、まだ問題が多いが大きくは3つの問題がある。

(1)最大の問題は政府・東電・原子力委員会・保安院・マスコミの情報の信頼性の欠如


彼らの出すTV・新聞情報は本当に信頼に値しない。何故正しい情報を隠蔽するのか?理由2つ。一つは彼らの責任回避であり国・東電は損害賠償額が膨らまないように必死だ。もう一つは絶対に原発推進の国策を揺るがさない事にも必死なのである。政府は明らかに東電を大切にしていて国民の安全は二の次にしている。
そしてほとぼりをなるべく早く覚まして原発建設推進や外国への販売、廃棄場(最終処分場)確保等に支障が出ないようにする事しか考えていない。だから連日情報統制に必死なのである。しかしそろそろ隠蔽にも限界が出つつある。

これに対し客観・公平に放射能の危険性や対応方法を教えてくれる人達を見つけ出し、その人達が出す情報に沿って自分の生き方・住む場所・放射能への対応を決めていく必要がある。幸いネットには優れた情報が多々あるので納得のいく情報を選別し、当面はその個人・組織の情報を毎日チェックしていけば良い。

(2)原発現場・周辺での大量被曝の危険性

現場作業員が命懸けでメルトダウンの防止等の為大量の放射能被曝覚悟で作業してくれている。
申し訳ないが今ここではこの放射線被曝の方々の問題は触れない。

(3)放射能(放射線を出す能力=ベクレル)と放射線(放出されるエネルギー=シーベルト)の基礎知識


TVで解説する学者や局員は国・東電の利益の為しか考えていない傾向が強い。放射線の規制値の解釈をごまかし、被曝する量があたかも少ないような事を言ってそれ程危険がないと強調し続けている。
しかも呆れた事に大量の放射能が長期的に排出される事が防げなくなった今になって規制値を緩和すると言う暴挙を行ったのである。

ここでは科学技術は人類に貢献する為に行うのであり、決して人類の健康を損なう事をやるべきでないとして連日原発緊急情報を出し続ける武田邦彦中部大学教授(元内閣府原子力安全委員会の専門委員)、飯山一郎氏のブログ、植草一秀氏のブログ等の情報を中心に纏めてみた。


①放射線の計測地点(原子力安全・保安院の公式サイト。東電が計測したもの)
・福島原発2号機より北西0.5キロの事務本館北の数値が発表されなくなった。
・福島原発の北西20キロ地点の福島県浪江町の数値が発表されなくなった。(15日330μSv/h)


②放射線の規制値の単位・危険度を正確に理解しよう。
今迄放射線はICRP(国際放射線防護委員会)食品はWHO(世界保健機構)の規制を使っていた。
・1,000μSv/y =日常生活で一般公衆(医療は除く)の線量限度(年間)
・2,400μSv/y =一人当たりの自然放射能(年間)
・50,000μSv/y =胸部X線コンピューター断層の作業者は年間一般人の50倍。
・100,000μSv/y=放射線業務従事者・防災に係る警察・消防従事者に認められている上限(年間)

生活比較でTV等で言われている単位は「Sv/y」、発表しているのは「Sv/h」で8,640倍も違う。
福島県浪江町では、原発事故発生後コンスタントに100~330μSv/hの高濃度放射能が観測され続けている。これを年間に換算すると1~3.3Svという恐ろしい高さなのだ。

・6,900μSv/回=CTスキャン1回等を例に出して比較するのは完全に間違っている。
この震災で規制の数値を上げる事にしたが、外国は日本産の食品の輸入を禁止する事になろう。
・1ベクレル(Bq)=1秒に1回の崩壊
・1シーベルト(Sv)=体重1g当たり10億回のウラン238の崩壊、或いは100億回のセシウム137の崩壊を吸収する事に相当する。
いずれも人体組織の化学結合がどれだけの割合でダメージを受けたかを示すもの。
・1Sv=1,000mSvを被曝する事は運転中に携帯メールを打つと同じ程度のリスク??
400㍉Sv=白血病の危険増大。
・5Sv以上=命の危険:逃げる。4Svの被曝で死亡率50%。
・チェルノブイリ100ミリSvで甲状腺がん

③放射線の種類
・ヨウ素131 半減期8日
・セシウム137 半減期30年。1950~60年代米・英・ソ連・仏・中国の大気中核実験を数100回繰り返し1960~1965年頃膨大な量の放射性物質が大気中に放出された。
・ストロンチウム90 同上。総量は少ないが骨に蓄積。
・プルトニウム241 半減期14年。原子炉近くで影響大。化学的に安定していて遠くに飛散しにくい?除染が容易。

火災発生の場合粉塵が拡散する。
・ジルコニウム95、モリブデン99、ルテニウム103、セリウム141、バリウム140等。

④日常生活への影響
・外からの被曝と内部被曝がある。本来はそれを合計した数値を発表すべきだが「外から」の分だけ発表している可能性があり要確認。もしそうなら2倍にして判断する必要がある。
・皮膚は放射線に強く、飲むのに比べれば10倍で同じと見て良い。赤ちゃんをお風呂に入れても大丈夫です。

⑤放射線に関する情報の発信者
・原子力安全保安院
・首相官邸<東北地方太平洋沖地震への対応>放射線モニタリングデータについて
・東京電力ホームページ 環境放射線データの公開
・東京電力・電力館(渋谷)のデータ
・内閣府食品安全委員会は3月17日に決めた暫定食品安全基準を緩和する検討をすると3月25日
発表。原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を用い、水や食品から1年間に摂取す
るヨウ素を50ミリシーベルト以下、セシウムを5ミリシーベルト以下としている。
・これら政府系の情報をチェックして評価を加えた家族・自身を守る為のサイトが良いと思う。
放射能の恐怖から身を守るための情報リンク
http://www.openarms-ltd.com/M_LINK/link_atom.html

植草氏ブログ http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
飯山氏ブログ http://grnba.com/iiyama/
武田教授    http://takedanet.com/
広瀬氏動画   http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk
後藤氏等動画(岩上氏IWJ) http://iwakamiyasumi.com/
取り敢えずひとまずここで締め、随時更新、修正していきます。   以上

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