2011年2月21日月曜日

巨大な権力の実態を知り、正しく対峙しよう

河津桜
1.権力はどこにあるのか?

戦後の日本の政治経済社会を動かして来たのはずっと米国であり、米国に隷属した官僚である。
マスコミが一体となってその意向を広報する。
米国の衰退が強まりイラク戦争に突入したブッシュ時代の小泉・竹中政権でその傾向が顕著になって、2008年のリーマンショックではっきりしたのは「米国覇権の近代資本主義システムに限界が近付いている」と言う事なのである。

経済が疲弊した米国は日本の残った資力を完全に奪おうと官僚・マスコミを総動員して菅政権で米国完全隷属体制を完成させようとしている。小沢・鳩山政権の誕生と退陣させる為の攻撃、その後も続く執拗な小沢氏完全抹殺を目指した攻撃ではっきりと姿を現したのである。日本の現在の官僚は米国の指示・要望をいかにして受け入れるかしか眼中にない人達なのだ。戦前は天皇を奉じていた人達が、戦後は完全に米国を奉じる事に替わったと言っても過言ではないだろう。

2.市場(経済)と国家(戦争)の関連の強さを再確認しよう

戦後国土が直接の戦場になった事のない日本では、市場(経済)と国家は別物で切り離して考える人達が本当に多くなってしまっているのが問題を見誤る要因になっていると思う。本当は国家権力があって初めて市場経済が成り立ち、その国家は戦争をし続けて生き抜いて来た事実を忘れてはいけないのである。

日本は1950年の朝鮮戦争特需で息を吹き返した後、日米安保条約に守られ市場(経済)に専念出来たから戦後の復興・繁栄が享受出来たのだ。しかしその経済の勢いも、米国という国家の戦争によって大きく左右されてきた。1965年のベトナム戦争の前に日韓基本条約が結ばれ、1970年位迄ベトナム特需で潤い1968年GNPで世界第2位まで上昇した。この後1972年のニクソン訪中や沖縄返還(6月)に繋がっていく。
そして同年8月にニクソンショックが起こったが、ベトナム戦争で疲弊した米国経済の立て直しを図ったものだ。この年は田中角栄内閣が誕生し、日中国交が正常化した年でもあった。

しかし1972年の出来事で何よりも大きいのはオイルショックだ。OAPECが石油の価格を4倍にした重みで欧米の経済は不況に向かうが、日本は省エネ技術等で10年間は何とか経済を維持した(狂乱物価と呼ばれるインフレはあったものの)が1980年頃から低成長時代に突入していく。
1980年代は米国と組んで米国の後退した分、それを補完する形で日本は世界最大規模のODAを多くの国に供与する国になっていったのだ。

1991年湾岸戦争、ソ連の解体から1992年PKO協力法でのカンボジアへの自衛隊初の海外派遣を経て小泉首相による2001年からのイラク戦争への自衛隊派遣に繋がっていく。この戦争で日本は戦費の約半分の約40兆円を米国債購入という形で負担していたのである。

3.官僚の決定権限の大きさと米国隷属の強さを知ろう。
ー国会はあって無きが如しだー

【財務省】
日本の本当の財政の規模は260兆円と言われている。国会で審議されるのは90兆円余の一般会計だけだ。残りの特別会計は依然としてブラックボックスのまま。特別会計には余剰金が100兆円近く存在する筈であり、実質的には官僚と米国の財布になっているのではないか。これを一体に組み替えて国民に取り戻して行こうとする小沢氏は米国・官僚から見て許すべからざる謀反者なのであろう。去年も特別会計から米国債やカリフォルニア州債を購入(合計20兆円近く?)したり日銀にJリート等数兆円を買わせたりして米国経済の破綻を防ぐのに協力しているのだ。
破綻しかかっている欧米に比べると日本は特別会計を入れればまだ世界有数の金持ち国だから円高になるのは必然的なのに事実を必死に覆い隠そうとしているのだ。

【外務省・防衛省】
2005年に2×2(外相・防衛相と米国国務・国防長官)で決めた日米同盟の深化についての取り決めをいよいよ本格的に実施しようとしている。もう米国とずっと打ち合わせて来て決まっている事だから官僚は鳩山元首相の辺野古の国外・県外移転等と言う事は全く聞かない。このままだと集団的自衛権の範囲を世界中に拡大し、米軍の指揮下で自衛隊が海外で戦う事態も起きかねない段階が近付いているのだ。

【法務省・特捜検察】
日本は事実上三権分立の国ではない。司法・行政・立法が一体となって権力を構成している。米国や官僚の権限を冒す政治家は特捜検察で排除するシステムになっている。これとマスコミが完全に一体化している。鳩山・小沢攻撃はまさにこれなのだ。

4.米国の一国覇権の終焉間近

ドルの暴落か切り下げがいつ起こるか、世界中が固唾を飲んで見守っている。米国がこれまでもずっとそうであったように新たな戦争を求める可能性は充分ある。イランとイスラエルの核戦争なのか、それとも北朝鮮・中国と日韓を戦わせるのか。これは何としても避けさせたい。

経済で言えば新たな通貨体制の模索が始まっており、3月の北京でのG20でドル・石油基軸通貨から次の体制について論議が始まるようだ。各々の通貨と金の交換比率を決めるドル・ユーロ・円・元等の通貨バスケット制度等が検討されるのか?

中国が昨年GDPで日本を抜き世界第2位と騒がれている。日本人はどうも中国に対する偏見や嫉妬や恐れの感情が強く共産党独裁体制は暴動で崩れるとか、軍国主義が強まり日本に核戦争をしかけてくるとか対立を煽る情報のみ流される。
冷静に見ると日本の30年ぐらい後を追って成長し、日本のバブル崩壊も充分研究して日本のように米国のいいなりにならない中国はまだ少なくとも10年以上発展が続くと見るべきだろう。
中国経済が米国を上回るのは早い人で2015年~19年、遅い人でも20年~30年後位とみているようだ。私は根拠は充分とは言えないが2020年までには起こると考えている。

今回のチュニジア・エジプト・リビアと続く政争はいろいろな思惑が交錯しているようだが、はっきり言える事は米国の衰退が最大の要因だという事だ。新自由主義的経済運営による一般国民からの収奪の強化への抗議であり日本で今まさにTPPと消費税増税で行おうとしている収奪の強化と重ね合わせると恐ろしい。今後の日本の姿になりかねない瀬戸際に来ていると言っていいだろう。

但し最後に再び強調しておく。日本の財政は特別会計も合わせてみるべきであり、そこにはまだまだ余裕があって、国会論議抜きで財務省がせっせと米国を支援しているのだ。消費税を払えずに、中小企業を企業倒産や経営者の自殺にどんどん追い込んでも平気で消費税増税を何としてもやり遂げようとしているのである。日本を米国と同じような国にするTPPと共に決して許してはいけないと思う。

2011年2月5日土曜日

消費税について


菅政権・マスコミが消費税早期増税を目指す改造をして、その実現に向けてひた走ろうとしている。これは絶対阻止しないと日本は崩壊に向かう事になる。本当にそうなる。社会を破壊する力を持っているのだ。
以下その理由を述べるが大半は斎藤貴男氏の新著「消費増税で日本崩壊」(ベスト新書・定価800円)の引用・纏めである。 この問題が一般の国民の世論に充分浸透しないで増税容認論が出やすいのは、やはり複雑で全体像の正確な把握が難しく、財務省・マスコミの嘘に正確に反論出来る人が少ないからだ。
要点を最小限にとどめても(1)①~(3)③まで7点で反論する必要があるが、増税反対論者は最低限いつでも反論出来るよう言論武装しておいて欲しい。もちろん斎藤氏の2つの著作と、菊池義博氏の消費税はゼロ%に出来る(以前に要約し本ブログに掲載済み)も加えた3著のマスターがベストですが。

1.消費税増税を主張する人達のかざす理由

2007年11月20日政府税制調査会答申(福田康夫自民党内閣当時)の要旨
(1)財政危機にある日本が増大する社会保障費に対応するには新たな財源が必要
(2)財源は景気に左右されない消費税が最善
(3)世代に偏らず公平な税制である
概ねその時の論理を菅政権もマスコミも今も踏襲しており制度の改善に踏み込む気配もない。

2.それぞれの理由に対する反論

(1)-①日本はまだ財政危機ではない事
約900兆円の国債発行残高があるが多くは建設国債が占めているし(高速道路や議員宿舎、役所の駐車場等々資産が沢山あるのだ)、日本政府はGDPに匹敵する金融資産を持っているのだ。それを差し引いた純債務で見るべきなのだ。その上国民金融資産が1300兆円ある。こんなお金持ちの国は世界に中国と日本だけだから円高になるのだ。

マーケットはそれを知っているからS&Pが日本国債の格下げをした日に日本国債の値が逆にあがるのだ。ジョージ・ソロスが昔韓国やタイを暴落させ大儲けした再現を日本国債で狙っているふしもあるが、売り崩しをやるならやってみろ、逆に大損して消えてなくなるのがオチなのではないか。

(1)-②年金改革は既に実施されている
2005年の制度改革で2006年から厚生年金を毎年を0.354%ずつ引き上げ2017年以降18.3%にする事になっている。これで充分とは言い切れないがこれで100年安心と言っていたのは与謝野や藤井・柳沢達ではないか。概ね大丈夫なのである。

(2)-①欧州と税率を比較するなら軽減税率も同じにした上でやるべきだ
例えば英国ではスーパーで買う食品・惣菜には消費税はかからない。レストランやテイクアウトの暖かい食品にはかかるが、大抵家で食事するから消費税が20%近くでも普段の生活に影響はない。
日本では既に酒・たばこ・ガソリン税という間接税をとっている。消費税の国際比較は単純にすべきでないのだ。

(2)-②何と菅政権・官僚・マスコミの隷従する米国に消費税はない!(小売売上税はあるが)
米国も導入を検討したが「金がかかる割には税収増が見込めないから、この税制はやめよう」と決めたのだ。食料品・生活必需品の税率を軽減すると貧困層だけでなく富裕層の負担まで軽くしてしまうし、事務処理が大変。だから駄目と言っているのだ。

実は消費税が貧困層を追い詰める結果、従来にも増して福祉ニーズ・犯罪・自殺の増加による大きな政府を懸念したのだ。

(3)-①とんでもなく不公平な税制である事。零細事業者苛めは過酷だ
もう2004年度に免税点が1000万円に引き下げられた今は「益税」問題など例外ケースだ。零細事業者まで消費税の納税義務者にさせられている。この厳しいデフレ競争下でお客様から消費税分を取りきれないで自分で被らざるを得ない場合も多いようだ。細かい事務の負担も過大で倒産・廃業・自殺に繋がる要因になっているケースも多い。

(3)-②派遣社員の増大を齎した大きな要因である
「仕入税額控除」で正社員の給与は対象にならないが派遣社員にすると対象になる。これでは企業が節税の為に正社員を雇用せず派遣会社から派遣して貰った方が得であり、経営者がそうしようとしたくなるのは当然だ。更に正社員が減少する事を誘発する本当に危険極まりない制度なのだ。

(3)-③輸出戻し税の還付
大企業は自身で払ってもいない(下請けに負担させている)消費税分の還付を受けている。08年度の還付金の総額は7兆円弱。消費税収総額の4割にも達しているのだ!


これだけ多くの社会不安を齎している消費税増税を大した検討もせず欠点も改善しないまま早期に導入しようと声高に叫ぶ財務省・マスコミ・菅政権の人達は制度の受益者側にいて利益が更に拡大するから言っているのであり、社会保障の維持充実の為というのは殆ど嘘に近いものである。

この他に大きな問題としてマクロ経済で見ても消費税導入年、税率引き上げ年とも大幅に景気を後退させ税収の減少になっていたし、その後の景気回復を阻む大きな要因になってきたと言う重大な事実もあるが、次回にしたい。